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もみつ もまれつ 鯖の道 第二回「天は笑っているか」

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秋の鯖街道アタック、第二話目。

1日目前半、電車での大阪脱出時から軽めのジャブをいくらかくらった私は、降り立った京都の洗練された秋の匂いに生気を取り戻す。

やがて道は街を離れいよいよ山中へと入ろうとしていた。

高鳴る期待を抱いていた私であったが、後に過酷な運命(?)が待ち受けていることをまだ知らない。

では1日目後半スタート。


***

今日は大きな峠を2つ越えなければならない。その2つの峠の一つ目「花背峠」へ向かう。

花背峠、標高769m。この数字は京都の峠の中で国道の舗装路としては最も標高が高いらしい。

さらに途中から平均勾配は10%近いものとなる。経験から言うと8%越えるとすぐ息が上がってしまう。

なぜわざわざそんなしんどい所を攻めるのか?そら俺も知らん笑

さらにそこを越えた後も、まだもう一つ大きな峠を越えねばならず、今日の宿までの道のりは60kmほどある。

しかもだ。朝あまり早く出発出来ず、出町柳を出たのが12時過ぎ。山の中だから5時までには今日の走りを終えたいとは思うのだが、そうなるとあと4時間ちょっとしか時間がない。。。

鞍馬を過ぎるあたりから少し焦りは感じ始めていたものの、「どうにかなるやろ」ととりあえず楽観視。

どうなったか予想しながらお読み下さいまへ^^;

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出町柳を出るとしばらく府道38号線で北へ向かう。鞍馬へ向かう叡山電鉄のそばを通ると、沿道の木々は鮮やかに染まって華やかな印象だ。

鞍馬寺まで来た。この辺ではとても大きなお寺で一大観光地でもあり、ここだけ人がわさわさとしていた。紅葉に彩られた山門を階段の下から眺めるとエエ感じやなあと思ったものの、さしてそれ以上の興味が沸かなかったのと、そんなことしてる場合ちゃうよね、と早めにスルー。

古民家が並ぶ情緒ある街道を進むと、いつのまにか辺りは杉林に囲まれていた。いよいよ鯖街道の本格スタートである。

小川に掛かる橋の欄干はびっしりと苔に覆われ、道全体しっとりした雰囲気に包まれていた。

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最初はそれほど勾配もきつくなかったが、序々に息があがるようになっていた。

なんか力が入らない。そういや昼飯まだやっけ?当たり前ですが峠で腹が減っては戦えません、昼食、というかは急ぎの燃料補給。

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出町のおにぎり屋さんの天蒸すをほおばる。むさくさ上手い。腹が減ってる時のおにぎりほど上手いものはないように思う。

おにぎりやから揚げをいくつか食べ、家から持参のあつあつ紅茶を飲んで元気回復。また峠を上る。

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はあ、それにしてもキツイ。さすが花背。空を見上げる、木々が鬱蒼としている、まだ先は長そうだ。

ここまで府道38号線をたどってきたが、とある分かれ道を北に向かって左へ、国道477号線へ突入する。

この分かれ道は所謂「百井(ももい)別れ」と呼ばれる箇所で、北に向かって右へ進路をとると「百井峠」という関西屈指の「酷道」へ繋がる入口となっているよう、百井側への入口は国道とは思えない峡路で、吸い込まれそうな雰囲気があった。

花背峠の頂上を目指す。地図上ではあと数kmのはずであるが勾配はさらに勢いを増し、追い討ちをかけるがごとく、見上げるとつづら折れの道。。。自転車を降りて押して進んでいく。

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時々横を見れば木立の向こうでは、太陽に輝く紅葉の山肌が垣間見え、その美しさにハッとさせられる。

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そしてついにやってきた、私は花背峠の頂上にたどり着いたのだった。

のぼりきった感想としては、正直、え?終わったん?という感じだった。もっと長いのかと思っていたけど、でも今はそんなこと言ってる場合じゃなく次の峠を目指さねばならぬ。

下りに入る。さっきまで汗をかいて上っていたが一転、激寒。さむっ!さむっ!サム41!!(?)

下の集落まで降りてきた。まだ寒い笑

晩秋の里の叙情的な雰囲気がたまらなく素敵だったのだが、大いなる懸念事項が現実となってきた。

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時間が真剣に足らなくなってきているようである。このままでは次に目指す「佐々里峠」の途中で真っ暗になる可能性が高い。暗闇の峠を自転車で越える、恐怖でしかない。暗闇で一番心配なのは野生動物である。この辺りはクマもいてるであろう、もし出くわしたら・・・。

さらに追い討ちをかけるように、休む間をあまり与えず走ってきたので足の様子がおかしかった。足全体に筋肉疲労がおこり、変な力をかけるとこむら返りをおこしそうな極限状態にまできていた。

花背はそこまで大したことなかったと思ったが、やはりそのダメージは大きかったようである。足の疲労はしばらく休憩を挟んだりすることで解消できそうな気もしたが、その時間がないのである。

峠を越えた先の美山という集落の宿を予約しているのでそこまではなんとかして行きたい。

ちなみに電車は通っておらず、バスでさえ夕方を前に今日の営業を終えているようで、公共交通機関を使った輪行は絶望的であった。

勤めて冷静に思案して3つの選択肢を考えた。

①どうにかして自力で峠越え

②通りかかる車をヒッチハイク

③宿の人の車で迎えに来てもらう

心が折れたわけじゃないので出来れば①で行きたい、足がもつかがかなり心配ですが・・・。

一人旅に出てやっちゃいけないなあと思うのは人に迷惑をかけること。イイ大人やし、自己責任で解決できるならその方がイイので②③は出来ればやりたくないが、どうしようもない時は人に頼るのもある意味勇気だ。

とりあえず宿の人に心配かけちゃいけないので電話で遅れることを伝えようと携帯を開くと、

「圏外」笑

そういやさっきからずっと圏外だったような気もする。近くに集落があって、洗濯物を取り込んでいる地元のオバチャンがいたので僕は声をかけた。

「あのお、突然でスイマセンが宿に電話をしたいので電話をかりることはできないでしょうか?」

オバチャン突然の若者の出現&申し出に一瞬「ハァ?」みたいな顔になってましたが、電話かしてくれました。

プルル、俺「あっ今日予約している自転車のものですが。」

宿「ああどうも。」

俺「今から佐々里峠を越えるので到着もうしばし遅れます。」

宿「ああそうなんですね、じゃご飯は7時くらいでイイですかね?」

俺「そ、そっすね。じゃあまた後ほど。」

あっさり、超あっさり。僕はやんわり「おお、それは大変だから迎えに行きます!」な展開を期待していたんですけど^^;

でもある意味これで吹っ切れたというか、これは天からの「GO!!」というサインなのだと適当に受け止めて、宿まで自力走破を決意した。電話かしてくれたオバチャンも「ま、頑張りや。」みたいな感じやったし笑

まだ空には夕暮れの残照がある頃だった。僕は峠アタックにそなえて最後のおにぎりを頬張った、この時食べたおにぎりがまあなんと美味かったこと。紅茶と別に入れていた、水筒のブラジル豆のコーヒーも心と体に沁みこんだ、さあ行こう。

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いよいよ峠が始まった。すでに空はうっすらとしか明りが残っていない、当然街灯など皆無。自転車のライトとヘッドライトのダブル照明で道を照らす。

平地でも足がつりそうな僕は上り坂なんてとんでもなく、最初から「押し」ですよ、「押し」、ええ。

佐々里峠は標高735m。上り始めは標高400mあたりなので標高差は300mちょいと、さすがに花背ほどの脅威ではないが、峠を越えても渓谷沿いの道をしばらく10kmほど走らねばならず道のりは長い。

何よりの脅威はさっきから何度も言ってる暗闇と足の疲労、そしてクマ。

今日ほどクマ鈴を持っていて良かったと思うことはない。ハンドルにぶら下げている鈴をチリンチリンと絶え間なく鳴らしてソワソワしながらのぼる。この前テレビで日本のアルプスを縦断するウルトラマラソンを特集していて、夜中も山中をヘッドライト点けて走っているランナーがいたのを思い出して、アレよかマシかなと暗闇のこわさをまぎらわす。

何度も足をつりそうになっては、立ち止まって10秒休憩、また歩いては止まるを繰り返す。

フと空を見上げると木の枝の向こうに、数え切れないくらいの星空が瞬いていて、「うわあ・・・」と思わずつぶやいた。

と、その瞬間横の茂みでガサガサと妙な音がしてハッとしてあたりを見回したが何もない。こわくなってその場を立ち去った。

道は上りから平坦に変わっていた。これならこげるかもと思い、自転車にまたがる。

それから程なくして「南丹市」の看板が現れた。峠の頂上である。

まずは第一関門クリア、しかしまだまだ先は長い。

下りはさっき花背で感じたほど寒くはなかった。緊張しているから感覚がおかしいのか。

視界が暗いのも、疲れているのもあるだろう、カーブの直前でバランス感覚が少しおかしいことに気付く。極力安全なスピードで下る。

下っている間は鈴を鳴らしにくいのでひたすらクマに会わないかビクビクしていた。

すると道の先に光源なるものが。それは街灯だった。街灯のそばには民家もある。人の住む所に戻ってきたのがなんと嬉しいことか、電気の明り、なんと心強いことか、ビバ文明。

とその喜びもつかのま、民家も街灯も再び姿を消し、杉林に囲まれた暗闇の道になってしまった。

そしておそれていた瞬間がついに訪れた。

道は川沿いの比較的まっすぐな直線。

道の向こうにうごめく黒い謎の物体を見つける!

つ、ついに、出たあああああああ!!!

と思いきや、その物体は軽やかなステップでピョーンと川に向かって道を横切った。頭の上には見覚えのある「ツノ」らしきもの、これってもしや・・・

「シカでした笑」(震え声)

血が一瞬逆流したような気がした(大げさか?)とりあえずあの方でなくて良かったと。

さらに道を進むと再び鬱蒼とした杉林に囲まれた道、すると前方、ライトに照らされて「キラーン」と光る2つ目玉!

こんどはどっち!?どっち!!?

これは正確な姿こそ分からなかったものの、動きは軽やかだったのでやはりシカかと思う。

この後も何度かシカラッシュが続き、その度に肝を冷やしていた。姿も見えずそばの草むらでガササ!ってされたらホンマにこわい。

道はいつになっても宿にたどり着かない。峠は下りきったとはいえ、民家はチラホラとしかないし、車もほとんど通らないし、いつホンマにあの方が現れるか分からんし、大げさですがちょっと生きた心地がしなかった。

唯一の救いはさっきまで平地ですらつりそうになっていた足が、今はなんなくペダルをこげていることである。これが人間の底力なのか、天からパワーでももらっているのかは知らん。

長い長い道にも終わりはやって来た。

暗闇の中、横に現れた温かみあるオレンジ色の灯りが建物から漏れていた。

もしかしてと思い、僕は立ち止まり、建物に向けてヘッドライトを照らす。

するとそこには今日泊まる宿「田歌舎」の文字が書かれていた、やった・・・。

宿の敷地に入るとスタッフの方が出迎えてくれた。

宿「ああ、お疲れ様!峠大変だったでしょう。」

俺「ええ、生きた心地しませんでした笑」

宿「まあ、どうぞ中へ。」

と宿泊棟へと案内される。そこに入る前に空を見上げると満点の星空が輝いていた。

部屋の中に入ると暖房がつけられていた。暖かい、なんて暖かい、文明ってすごいわ・・・。

荷物をおろし、重ねられた布団の上にゴロンと横になった。

その瞬間、緊張の糸が一気にほぐれ、僕は顔を両手で覆い、一人で大笑いした。生きてる、生きてるってすごいな!って笑

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お楽しみの食事タイムである。

ここの宿「田歌舎」は自給自足を目指している宿で、米・野菜はもちろん、お肉も家畜や狩猟によって得ているそうだ。

そんな田歌舎での夕食は野趣あふれるものばかりで、スモークチキン&野菜プレートや、シカのステーキ、野菜がゴロゴロ入ったカレー風味のサモサなど、美味しくてご飯も3杯平らげた。食べ物、作ってくれた人にただひたすら感謝しかない、ありがとうございました。

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部屋で荷物の整理や、今日の出来事をメモに簡単にまとめたりして時間を過ごした。朝の輪行の時からこの今まで、怒涛のごとく1日が流れ、一瞬の出来事であったかのようにも感じる。とりえあえず夜中の峠アタックはやりたくないなと笑

今回はなにもなかったものの、北海道では野犬数匹と夜間に遭遇したことがあるので、田舎の夜間の走行は絶対に避けたいものである。てゆうか家出るのがそもそも遅かったんやって笑

夜空にはいつしか満月が現れて、煌々と辺りを青く、幻想的に照らし出していた。

僕はその美しい夜空を飽きることなく何度も眺めては、明日の旅路に一人思いを馳せるのであった。


中山うり「青い夜」
http://www.youtube.com/watch?v=ZUxe2PP53KU
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Comment

あり~

真っ暗な峠道でも、街灯が1つあるだけで心が落ち着きますね。
夜道を走りたくなくても、走らなければいけない時がある。
自転車旅でなければこんな苦労をしなくて済むのにと思いつつも、
平凡な生活では味わえない経験が出来ることを楽しんでいる自分がいるという感じですね。

さめ

お、お、お、お、お疲れ~
無人の夜間走行は怖いですよね
更にクマ出没注意なトコでエンジン無し・鈴以外音なしは怖すぎ((;゚Д゚)ガクガクブルブル
一度、秋の神鍋高原で熊笹の一本道の中、あの方を発見しましたが
こちらがアクセル全開で煽ったら避けてくれはりましたよww
けど、自転車ではそうはいかんよね
道具がないといかに人間が弱い生物か思い知らされる瞬間
しかしそのぶん思いの深い旅になります

あぁ、腹減ったww
  • URL
  • 2013/12/07 00:06

バリカン

常々思ってはおったワケですが、
お仕事のご都合等あるとは思うのですが、
そのスロースターティングが旅の味を出してますよね♪(笑

さて、己の内でボケツッコミを繰り返す、天使と悪魔が良いですね。
一人旅ってほんま、自己との対話の連続ですから・・・(^^。
にしても鹿、相当増えてるんやと思います。
早朝、未だ暗い峠道を走ってて、ブラインドカーブの先で、
団体さんが道横切ってたりするとマジでヒヤっとします(苦。
そんな鹿さんの、ジビエの食感お味はいかがでしたか?(^^

アマガエル♪

あり~さん

五感を使って旅をすると、普段では感じることのない喜びを覚えます。単純なおにぎりがすごく美味しかったり、銭湯の風呂がとてつもなく心と体に沁みたり。

まあしかし段取りは良くしておきたいものです、ホンマ旅以外でも段取りの悪さでアイタタなことが今までもあるもんで^^;
  • URL
  • 2013/12/09 01:34

アマガエル♪

さめさん

さめさんおっしゃったとおり、鯖街道なめてかかるとえらいこっちゃですね^^;

翌日動物に関するこわーい話を宿の人からお聞かせいただいたのですが、その中で夜間にバイクとか車の強いライトをシカに浴びせると、ビックリしてなぜかその光に向かって突進してくるみたいなこと言ってました。

おにぎりは日本のソウルフードですねえ^^
  • URL
  • 2013/12/09 01:42

アマガエル♪

バリカンさん

仕事の前の日ですとさすがに早く寝んと、とかなるんですけど、旅で早くなるとはいえ休み前でもあるわけで、もう心はゆるゆる、ずるずるしてるうちに、そのうちえらいこっちゃな展開に・・・もうホンマこのあかんたれスパイラル自分でもどうにかせんととは思うんですけど^^;

一人旅に行くと饒舌になるというか、思うことはいっぱい出てくるけど、しゃべる相手はおらず、でも口にしなくて、一人でブツブツニヤニヤ独り言しながら自転車こいでます、キモツワルー笑

シカさんもトリさんも美味しかったですよ、感謝であります。

おにぎりの件ですが、今回買ったのは高菜、天むす、ウインナー巻きの割りとファンキー?なラインナップをチョイスしてみました^^
  • URL
  • 2013/12/09 01:51

まりこうた

。。うわ~ん。。
ご無事で、なによりでした。。
読んでるこっちまで、生きてる心地しなかったですよ~

鹿さんはもしかして、天からのパワーを運んでくる遣いだったかもしれませんよ?(アマガエルさんをすんごいビビらせながら。笑)

そんな寒く怖いつらい思いをしてたどり着いた宿、あったかい部屋、おいしいご飯、
最高だったでしょうね。

生きてる心地。
ビバ、生きてる!!

やはりすてきな旅です。^^

*まりこうた*

まりこうたさん、その天からの遣い、その晩に食べてますから(汗汗

もう少し余裕のあるラグジュアリーな旅をしたいもんです(^^;)足りなかったものが満ち足りた時の感触は言葉にできない感動はあるわけですが笑
  • URL
  • 2013/12/17 12:48

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プロフィール

アマガエル♪

Author:アマガエル♪
自転車に乗って、旅して、撮る。

自称「自転車カメラニスト」のアマガエルです。

旅と日常を写真と、時々文章とともに綴ります。

◎カメラ
・OLYMPUS OM-1
・OLYMPUS E-5
・OLYMPUS E-620
・FUJIFILM NATURA NS
・VOIGTLANDER BESSA R2A
・SEAGULL 4A-107

◎自転車
・ARAYA RANDONNEUR RAN
・DAHON BOARDWALK

ご意見や、撮らせていただいた写真のデータちょうだいとかございましたらメールください。
goldhill_mino@yahoo.co.jp

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