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9月14日365日目「僕はやっぱり大楽毛」釧路―豊頃

北海道 (81)


根室のトイレで仲良くなった・・・と書けばおかしな響きだが、たまたま入ったトイレの中でお互い旅人と分かり、意気投合して一緒にしばらく走ることになったのがスワちゃんという大学生の青年である。根室を出た僕たちは帯広に向けて西へと走っていた。

北海道 (77)


2人で走っていると、前を走っていた僕に後ろからスワちゃんが、
「なんか前に旅人が走っていますよ。」
と言って、よく見るとずっと前の方に自転車をこいでいる男の子が確認できた。スワちゃんも、僕と同じく出会いを楽しむ人間だ。僕は、
「(スワちゃんは)追っかけたいんやな。」
と思って、スピードを上げて彼に追いつこうとした。・・・がなかなか追いつけない。むこうもけっこうな速さで走っている様子。僕よりタイヤが細いロードタイプの自転車にのってるスワちゃんが前に出て、僕を牽引するように走り出した。

そしてなんとかその彼に追いつくことができ、まずはスワちゃんが話しかけた。3人自転車をとめて、声をかけられたその青年は、
「ああ、どうも。」
と、大して笑いもせずボソッと挨拶をした。この時僕は、
「あれ?反応悪いな。」
と思ったのですが、スワちゃんは意気揚々と、
「釧路までもうすぐだから一緒に走りませんか?」
と彼を誘って、3人で釧路の街まで走ることにした。

釧路についた僕たち。大きな商業施設の前で自転車をとめて、さっき知り合ったばかりのI君と話をした。僕とスワちゃんは今日キャンプをする予定だった。I君は釧路にあるライダーハウスに泊まる予定だという。しかしその時、スワちゃんのテンションは意外なほどに高かった。
「よかったら僕たちと一緒にキャンプしない?鍋作って食べましょうよ!」
とスワちゃん。しかしその時の彼の顔色を見る限り、あまりノリ気なようには見えなかったが、スワちゃんの熱意に押されて一緒にキャンプすることとなった。彼の予定を変えてしまって良かったのだろうか?と僕はこの時から少し心配していた。

スーパーに食材を買いに行く。その時のスワちゃんはなぜかめちゃめちゃテンションが高かった。
「なんかすっごいワクワクしますねえ。」
とスワちゃんはI君に同意を求めたが、返ってきた言葉は、
「え?オレ普通っす。」
と半笑いを浮かべながらそう言った。僕はますます心配になった。彼をさそって本当に良かったのだろうか?

キャンプ地で僕たちは買った食材でキムチ鍋を作った。野菜と肉がたくさん入って、最後は卵も入れたおじやでしめた。この時の鍋がめちゃめちゃ旨くて、スワちゃんはもちろん、この時はI君もイイ顔をして食べていた。

翌朝、I君も僕たちと同じく帯広へ向かうというので、帯広まで一緒に走ることになった。僕は彼への心配をスワちゃんに言うと、昨日テンションの高かったスワちゃんもなんとなく気付いていたようで、
「もしどうしても僕たちと行動するのが嫌そうでしたらどこかで彼とお別れしましょうか。」
とI君のいない所で2人話し合った。

そして僕たちは帯広へと走り出した。3人は縦になって、最初僕が先頭になって走る。ちなみにI君は1日150kmくらい走ってしまうなかなかの豪脚。僕とスワちゃんが昨日走った距離でだいたい100kmくらい。僕とスワちゃんなら無理のないペースでのんびりと走るのですが、後ろから、何となく鬼気迫るといえば大げさだが、速く走らないといけないようなプレッシャーを感じて僕はいつもより頑張った。が、それでもI君からしたら遅かったようだ。I君は「今度は僕が前に行きます。」と言って僕の前に出ると、俄然スピードが上がった。僕は必死についていく。

そんな時、道の脇にある地名の看板が見えて一瞬胸が踊った。その地名は「大楽毛」と書かれてあった(「おたのしけ」と読みます)。お、大きい楽しい毛!?なんてお楽しげな名前!!(笑)自分の笑いのツボにど真ん中だった。(失礼だったらスイマセン。)スワちゃんだけなら声をかけてとまってその看板の写真を撮るのだけど、この時はそんなことでとめたら舌打ちをされかねない雰囲気だったので、そのまますぐに通り過ぎることになった。
「ああ・・・。僕の大楽毛が・・・。」
とものすごく残念な気持ちで僕はI君のペースについていった。

20~30km走ったところで道の駅があり、少し休憩した後また走り出した。この時の3人のポジションはI君、スワちゃん、僕。相変わらずペースは早い。僕はついていくのが必死でとても周りの景色を楽しんでいる余裕などなかった。だんだん思ってきた。
「これ何が楽しいんや?」
景色を楽しみながらのんびりいくのがツーリングの醍醐味と考えている僕にとっては、ただ距離を走るだけの旅に意味を感じなかった。人の価値観はそれぞれだから否定する気は全くないけど、僕はそうじゃない。スワちゃんとI君は同じロードタイプの自転車で、僕よりも半分ほどしか荷物を積んでいない。体力の差もあるかもしれないが、必然的に彼らの方がスピードが速くて当然なのである。だんだんヒザのあたりが悲鳴をあげてきた。これ以上頑張ったらヒザが壊れる。頭の中でも正直どうでも良くなっていた。
「もうエエわ。あとは2人で頑張ってくれ。」
僕は無言でペースを落とし、どんどん距離が離れていく2人をゆっくり見送った。

それからしばらくして、ずっと向こうの道端にチャリダーが一人たっているのが見えた。近づくとスワちゃんでI君の姿はそこにはなかった。スワちゃんは特に表情を浮かべずに、
「彼とは別れました。」
と言った。スワちゃん、あの後必死でI君についていったそう。だがスワちゃんは思った、彼は僕たちをひきちぎりたくこんな速く走っていると。スワちゃんはI君に声をかけ、たぶん言葉を選んでI君を開放するように別れを言ったのだと思う。スワちゃんの話だと、その時のI君は今までにない笑みを浮かべて一人また走っていったという。

また2人になった僕たちはこんな会話をした。
僕「やっぱり彼はオレらと行動するのイヤやってんなー。悪いことしたな。」
スワちゃん「そうですねー。でも一番最初に彼を見つけた時にニャンチュウ(僕のことです)さんも追いかけるから・・・。」
僕「え?だってアレはスワちゃんが彼と話したいと思ったから追いかけてんで?」
スワちゃん「違いますよ。僕は『あそこに旅人がいますね。』って言っただけで、追いかけようとは言ってませんよ。」
僕「何やそれー。ほんなその時点で勘違いしとったんかー(笑)」

まあこんなアホな会話がなされたが、I君に悪いことしたという点では2人とも一致している。人には人の旅がある。人や景色の出会いを楽しむ僕とスワちゃんがいれば、I君のようにロンリーウルフな性格で淡々と走るのが楽しい旅人もいるってこと。

僕たちはまたのんびりと走り出した。左には海が陽光を浴びてキラキラと光っていた。さっきは気付かなかった景色だった。お昼休憩後、まだそんなに走ってないけどスワちゃんが、
「ちょっとコンビニよってもイイですか?」
というから近くにあったセイコーマートに立ち寄った。スワちゃん、用事も終わり今度は僕がこう言った。
「なあ、アイス食べよや。」
もうこの時点で今日目指していた帯広まで頑張ろうという考えは2人にはなかった。
「やっぱ旅はこうやないとねえ。」
アイスを食べながらスワちゃんと笑った。ああ、そういえば「大楽毛」は写真撮れなくて悔しかったなあ!!(笑)僕はやっぱり大楽毛なのである。

オマケの話。I君と別れる前に休憩で立ち寄った道の駅には、観光地によくある顔をハメ込む記念写真用のパネルがあった。写真は出せないけど、パネルにはまったI君の顔は、その時の状況からして意外な程にはっちゃけた笑顔をしていた。実は彼は僕たちとの行動を楽しんでいたのか、単にヤケクソで笑ったのか、やっぱり後者の方なのでしょうかね(笑)

北海道 (80)
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自転車に乗って、旅して、撮る。

自称「自転車カメラニスト」のアマガエルです。

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